全国の児童や生徒に1人1台のコンピュータと高速インターネットを整備する取り組み「GIGAスクール構想」ですが、その影響は子どもと保護者だけでなく現場で教職にあたっている小学校教師も大きく受けます。ここではGIGAスクール構想において小学校教師がどう変わるべきか?を解説していきます。
GIGAスクール構想は2019年頃に掲げられてから順次整備が進められていますが、現在は小学校などの96.2%で端末の利活用が開始されています。そのうち84.8%が全学年で導入されており、そのほかは一部の導入に留まっているという現実があります。
さらに利活用の実態としては「毎日は使用していない」が20%以上となっており、その理由の一つには「教師が忙しすぎて新たなやり方が試せない」という原因が挙げられています。そのため制度面の整備だけでなく実際に利活用する現場での普及に向けた具体的な取り組みも求められています。
参照元:
端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(確定値)|文部科学省初等中等教育局修学支援・教材課
~教員110人に緊急アンケート学校DXの現状調査の結果速報~ ICT端末があっても2割は「毎日使用していない」|株式会社LearnMore
以前から教師は長時間労働が問題視されていましたが、「働き方改革」が普及しつつある現代ではどうでしょうか。文部科学省が行っている教員勤務実態調査によると、全ての職種において在校等時間が減少するなど時間外労働時間は減ったという結果がある一方で、長時間労働であるという事実には変わりがない状況です。そして以前にはなく新しく増えている負担として、故障したPCの入れ替えなどの準備・対応が発生しているともされており、GIGAスクール構想も教員に対する負担となっている現実があります。
参照元:
教員勤務実態調査(令和4年度)集計【速報値】 |文部科学省
端末利活用状況等の実態調査(令和3年7月末時点)(確定値)|文部科学省初等中等教育局修学支援・教材課
教師の業務負担を増加させてしまっているGIGAスクール構想ですが、一方でメリットとなっている要素もいくつかあります。まずは教員同士の情報共有がしやすくなるという点があり、「どの教科で何をしているのか」について見える化することができています。他にも授業支援ツールを活用できるなど、デジタルだからこそできることが増えることで、子どもたちの学びの幅が大きく広がっている状況です。
参照元:GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について|デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省
GIGAスクール構想には学校の指導だけでなく、家庭の協力も必要です。
一人1台の端末は、子供の学習だけでなく、大人にとっても日常や仕事にはすでに基盤的なツールになっています。
将来的にもますます欠かせない存在になると考えられ、子供のうちから端末になじみ、ルールやリテラシーに理解を深めていくことは決して早すぎません。
そのためにも、学校と家庭、双方からの指導がとても大切になります。
GIGAスクール構想のタブレットに関する費用は、自治体によってその負担先や程度に違いが見られます。
自治体が負担するところ、保護者が負担するところ、また、貸付というケースも見られます。
いずれにしろタブレットは高価なツールです。子供が壊してしまうことも大いに考えられるため、破損する前に保証の確認や保険に加入することをおすすめします。
テストの作成や採点は、教員にとって負担の大きい校務の1つに数えられますが、これにツールを活用することで効率化を行うことができます。
タブレット上でテストを行えるほか、作成したものをプリントアウトして配布するなど、さまざまな使い方をできるのがポイントです。
テストの採点もパソコンやタブレットから行え、プリントアウトしたものであれば答案用紙の内容をデータとしてパソコンに取り込み、そこで採点することもできます。
また、テストの採点をツールを使って行うことで、点数をつける際のミスが起こりにくくなります。
生徒との交流には連絡帳が、保護者との連絡にはプリントが配布されます。
しかし、両方とも従来は紙であるために紛失のリスクがあり、データとしても残りにくいのが欠点でした。
また、プリントには大切な行事や情報共有のための連絡事項が書かれていることも少なくなく、しっかりと保護者に伝わっていないと後々トラブルにつながることも考えられます。
連絡帳も同様に、やり取りがほかの生徒の目にもふれるなど、プライバシーに欠けるという問題点があります。
そこで、この連絡帳とプリントをツールに変えることで、連絡帳はプライバシーが守られるようになり、プリントの内容もしっかりと保護者に伝わるなど、従来のデメリットを改善することができます。
紙のプリントには保護者会・家庭訪問・参観日の日程や出欠などの連絡事項が記載されることがあります。
しかし、生徒から保護者に渡る段階で紛失する可能性も少なくはなく、出欠の確認や委任状の送付などの業務に負担がかかる場合もありました。
ツールを使って保護者会・家庭訪問・参観日のスケジュールや出欠など管理することで、校務の効率はかなりアップします。
小学校の教師に対するアンケートによると、約5割の方が「ICTの効果的な活用方法が分からない」という回答をした結果が出ています。ここでは「小学校の教師がつけるべきICTリテラシーや活用方法」について解説・紹介をしますので、ぜひチェックして下さい。
参照元:GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について|デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省
そもそもICT機器を触るにあたっては、感覚的なものも含めてその操作を知っておく必要があります。コンピュータは機種やメーカーによってデザイン・機能が異なりますが、基本的な操作方法は同じです。必要な操作は一通り行えるよう、しっかりと準備しておきましょう。
インターネットを利用するうえで見に付けておかなければならない感覚の一つが「セキュリティ」です。インターネットは世界中に広がっており、さまざまな情報やデータを取得することができます。しかしインターネットにおいては悪意のある第三者から何らかのサイバー攻撃やウイルス感染、データの抜き取りなどといった被害にあう可能性があり、それを未然に防ぐためにも必要最低限のネットワークセキュリティは準備しておく必要があります。
インターネット上にはさまざまなコンテンツがあり、誰でも自由に保存できるような機能も備わっています。そして自らも情報発信を行うことができるため、お気に入りのイラストや音楽などを利用したいと考える方も多いのではないでしょうか。しかし他人が制作したコンテンツには著作権があり、その取扱いには注意が必要です。著作権とはどういうものか、どういう利用であれば問題がないのかなどをしっかりと学んでおく必要があります。
失敗してもいいのでとにかくやってみる、の精神で「まずは使ってみる」を合言葉に取り組んだ事例では、一授業に1ICT活動を入れるところから取り組むことでストレスなく導入を進められたという感想がありました。
リコメンド型のAIドリルを宿題として導入した結果、児童それぞれの学力に応じた課題の提示が可能となりました。課題が早く終わった児童に対してはより難しい・その後に続く課題をさせることができ、学びの機会を失わずに効率化が実現しています。
休校中において、新たな単元の学習などに対して授業に優れた先生の動画で学習を進めることができました。小学校1年生から中学校3年生までの内容の学習ソフトを全学年で使えるようにし、予習や復習・自習・別室登校などに活用する予定です。
参照元:GIGAスクール構想に関する教育関係者へのアンケートの結果及び今後の方向性について|デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省
GIGAスクール構想で悩みを抱えるのは、順応力の高い子供よりも、むしろ教育者や保護者などの大人ではないでしょうか。
ITは苦手! と、タブレットなどの端末やアプリなどのツールを敬遠してきた方もいるかと思います。
しかし、実際に活用してみると、タブレットや校務を効率化するツールはとても便利なものです。
とりあえず試してみるぐらいの気持ちで、まずは実際にタブレットやツールにふれることが大切です。
ICT教育を推進するうえで重要なのは、どのポイントに焦点を当てるかです。
文部科学省が教育を推進しているのが、下記の3つになります。
今後ますます求められるのが、情報社会を生きるために必要な知識や考え方のベースとなる情報モラル、問題解決力を養う情報活用能力。そして問題解決力を養うためのプログラミング。自分のお子様、あるいは抱えている生徒のどの部分を育てていきたいかを考えながら選ぶことが大事です。下記に「基本操作・情報モラル」「問題解決・探究力」「プログラミング」が学べるツールを紹介しています。